カーナビに学ぶ、仮説思考というアプローチの素晴らしさ

スポンサーリンク
イベント
この記事は約10分で読めます。

コンサルタントの細谷功さんによる問題解決実践セミナーに参加をしてきました。セミナー受講から2週間も経ってしまいましたが、気づきとなった部分を自身の備忘録として残すためにもブログ記事を執筆します。セミナーの内容は非常に濃いもので、ここに書いたのはセミナーの中で話された内容の20%にも満たないかと思います。エッセンスとして抽出した内容とご了承くださいませ。(それでも十四分くらいに濃い内容だと思います。)

問題解決というテーマは、以前から当ブログでもよく取り扱っており、私がビジネススキルとして非常に重要視しているものです。英語と並んでポータブルスキルのツートップといえるのではないかと思うほどです。

わたしはこのセミナーで、問題解決思考について二つの大きな学びありました。一つ目は「ビジネスの現場では答えのない問題ばかりである」というよく言われるセリフについて、深い理解を得られたこと。もう1つはタイトルにも書いた仮設思考の素晴らしさです。

1.世の中の殆どを占める「答えのない問題」にどう対処するか


経営コンサルの現場では、例えば次のような質問がされるそうです。

「(マクドナルドの経営陣から)全世界のマックで『ご一緒にチキンナゲットはいかがですか?』とオススメをするキャンペーンを打ったら、売り上げ効果はどれくらいになるだろうか?」

この問題の答えは、やってみれば分かるけどやってみないと分からないというが正直なところでしょう。でも実行するには100%とはいかずとも精度の高いシミュレーション結果に基づいた判断が必要です。
このように大きなことでなくとも、自分が属する組織が何か根本的な問題(例えば慢性的な人員不足など)を孕んでいて、どのように解決するのが正解かなどは、答えのない問題です。皆さんもご自身の仕事に当てはめてみてください。答えのある問題のほうがはるかに少なくないでしょうか。

<答えのあるもの>

  • 既に決まっている納期
  • マニュアルの揃っている(そしてそれ通りにしないといけない)ルーティンワーク
  • 業界ごとにあるセオリー、商習慣

<答えのないもの>

  • ブレークスルーの方法
  • 問題解決、改善へのアプローチ方法
  • 営業手法(どうすれば売れるかの正解はない)
  • 新製品を何にしようかといったアイデア

他にも部下や後輩の教育方法にだって正解はありませんし、社内のコミュニケーションにだって正解はありません。接待の仕方だってこれまでは赤坂や六本木で豪華に振舞えば相手は喜んでいましたが、それもバブルまで。そんなセオリーどおりのやり方ではもはや相手は喜びません。接待の方法ひとつとっても「相手を喜ばせるにはどうしたら良いか」を徹底的に考えなくてはならない答えのない仕事なのです。<答えのあるもの>に書いたセオリーなんていうものも、グローバル化が進んでくればセオリーは立ち消えて正解ではなくなっていくでしょう。

しかしながら日本人は、教育のやり方が影響して答えを強く求める傾向にあるといわれています。対してアメリカは、答えのない問題を生徒に考えさせる教育であり、この対比は余りにも有名です。日本の教育は論理的思考能力を高めることについては、大変大きな成果を上げました。だから日本人はルーティンワークは得意ですし、言われた事をすることは得意です。しかし言われていないことを自ら考えたり、答えのない問題に挑むことは苦手です。
フェルミ推定の問題だってアメリカ人は喜んで「ウーン」と頭を悩ませるのに、日本人は「そんなの分かるハズがない」と考えることすらやめてしまうことが多いです。それゆえ日本からGoogleやApple、Amazonが出てこないという説は私も強く支持します。

「世の中には答えのある問題なんて圧倒的に少ない。」 これを認識してしまえば心強いなというのが、今回私がセミナーで学んだことです。私も日本人ですから、教育の中で「(答えのある問題で)間違ったことを言うのは恥ずかしくて、ダメなことだ」という固定観念がありました。学校での勉強では殆どが答えのある問題ばかりでした。
でも実際のビジネスの現場、もっというと社会に出ると答えのない問題が圧倒的多数なのです。答えのない問題で間違った答えを言って怒られることがあると思いますか?ありませんよね。だって答えがないのですから答えを間違えるということはありえない。答えがないのに間違っているというのは大きな論理矛盾です。
冒頭に書いたマックのチキンナゲットのキャンペーンの話しでも、自分なりに考えた答えを発表すれば良いのです。その答えがどれだけ深く考えられたか、確かな裏づけがあることかという点については何らかの評価をされますが、「分かりません」ほど愚かな答えはありません。「分かりません」は0点です。
少し考えて、例えば「チキンナゲットの売り上げについてはグループ客において高い効果が見込まれると思います。感覚的には5組に一組くらいから注文をいただけるのではないかと。私も友人とマクドに行った際には友人に『2人で1つナゲットを買わないか』と提案をすると受け入れられることが多いです。一人客にとっては、ハンバーガーのセットとナゲット5個は数が少し多いですから。」という答えは、自分の友人とのマックの利用経験のみに基づく回答ではありますが、1点以上の点数がつくでしょう。
実際には20%で成功するとは思えませんが、やってみたら違ったとしても、この時点で打ち立てた1つの仮説であることには違いありません。質問されて「1分で答えてくれ」と言われた質問ならばかなり高得点がつく回答だといえます。

マクドナルド側は「ハンバーガーのセットを頼んだ一人客にはナゲットは多すぎるのか。」「じゃあミニナゲットをセット商品として販売したらどうか?」「そもそもナゲットが5個というのは妥当な数なのか再考の余地はないのか?」といった仮説を打ち立てることができるのですから。

答えのない仕事においては「分かりません」が最も最悪です。

'so, don't talk to me like that. i'm also a cat.'

就活生は悩んじゃダメだ。悩めば解決すると思っていますか?で書いた、悩んでるだけで動かない就活生も同じです。答えが見つからずに動けないでいる状態というのは、問題の答えが分からずに「分かりません」と言って逃げているだけの状態です。分からないなりに考えて動くことが大切であって、分からなくてもある程度の確かさで問題に対してアプローチできるスキルもビジネスにおいては大切なものとなります。

2.カーナビゲーションが仮説思考のお手本


サラリと書きましたが、「どうすればよいか分からない問題に対して、分からないながらもある程度の確かさで正確にアプローチ」するって、とても難しいことです。ある程度経験のある領域であれば、過去の成功体験から類推すればベストプラクティスはなんだろうと考えられますが、全く初めてではなかなか難しいです。こういう場合に有効になるのが仮説思考です。

仮説思考については当ブログでは初めて取上げますね。コンサルタントの細谷さんによれば、問題解決の現場でのものの考え方は次の3つに分類できるそうです。

  1. 仮説思考力(結論から考える)
  2. フレームワーク思考力(全体から考える)
  3. 抽象化思考力(単純に考える)

2つめのフレームワーク思考力は一時期コンサルタントの代名詞的に流行ったことがありますね。コンサルタントといえばフレームワークを沢山知ってて使いこなしているイメージ。これは鳥の視点で上から見下ろして考える思考方法です。(ちなみに私のお奨め書籍はコンサルタントが使っているフレームワーク思考法です。Amazonの写真では載っていませんが、帯にはグロービス代表の堀さんからの推薦もあります。)

3つめの抽象化思考力は個々個別の事情に振り回されるのではなく、事象を単純化、一般化することで思考と決定のスピードを上げる考え方です。考える中であれもこれも例外を考慮していたら先に進めませんからね。たとえばチキンナゲットの例でも、「国ごとにチキンナゲットの大きさやピースの数が違うから、基準を統一しないと答えが出せない」とか言ったら、何千年経っても答えなんて出ません。

1つめの仮説思考は、何がなんでもまず一旦仮説を立てる思考方法です。たとえばチキンナゲットの例であればまず売り上げが上がるのか上がらないのか仮説を立てててみる。時間が許されるならそれを裏付ける根拠とどれくらい上がるかを計算してみる。根拠が揃っていくに連れて「実は売り上げは下がる」という決論になったら始めの仮説を修正して「売り上げはこれくらい下がるだろう。その根拠はセールストークによってレジの回転速度が落ちて・・・」という答えにする。

ダメな例はこんな感じ。「えーっとまずは各国のナゲット販売の実情を調査してマーケット規模がどれくらいあるかを考えよう。既に『ナゲットの同時注文率100%』の国もあるかもしれないしね。うん。それから各国のナゲットの値段と購買力も調査をしよう。それによって店員の一言でナゲットがどれくらい買われるかを考えやすくなるぞ。よし。それから、日本をサンプルとして市場調査をしてみよう。それがいい。街角アンケートかある店舗でのテスト導入という形で行ってみよう。1ヶ月も行えばかなり良いサンプルがとれるぞ。それから・・・」

一体いつ答えが出るんでしょうか?!?!

Angry Mandy!

セミナーではカーナビが仮説思考の最も分かりやすい例だと教えてくれました。

今では多種多様なカーナビがありますが、基本的な動作として我々が認識している特長は次の通りでしょう。

  • 瞬時にその時点で知りうる情報から、ルートと到着予定時刻を教えてくれる。
  • 工事などで通れないことが分かれば瞬時に修正をして、最新ルートを教えてくれる。
  • 最新の渋滞情報が入り次第、それを考慮してまたルートを修正する。
  • 必ず目的地に届けてくれる。

確かにスタート時に目的地を入力した時点でカーナビが「車庫なので電波が悪く、渋滞情報が取得できません。正確なルート算出には渋滞情報は必須です!そのため今はまだルートも到着時間もお伝えすることが出来ません。(`・ω・´)キリッ」とか言ったらその時点でメーカーに返品です。今ある情報だけで仮説を立てて、新情報が入るたびに修正をしながら最終的には最速で送り届けてくれるのがカーナビです。

例えば間違いが許されない現場や仕事ではこのような考え、動き方は適しない場合もありますが、物事をスピーディに進めるにはとても有効な考え方だということはお分かりいただけたでしょうか。適さない現場というのは例えばお客様と接する現場で間違いを言っちゃいけないケースなどが挙げられます。他にも確証のない仮説の状態で新聞記事としてしまうのはいただけないかと思います。

ちなみに私は仕事の現場では相手に仮説であることを伝えた上でカーナビ的な動きを取ることが多いです。社内では仮説思考の重要性は多くの人が知っているのであまり「前言っていたことと違うじゃないか」と非難されることはありません。
お客様と接する場合も、「今分かっているのはここまでです。ここから先は仮説ですが」とか、「こういう懸念があることが想定されるので、いまその部分について調査をしているところです。」という形で、仮説はあくまで仮説といいながらもその時点で分かっていることを共有することで、先方の意思決定のスピードを上げることができます。
(まあ言い方を気をつけないと仮説でなく結論として受け取られてしまう危険があるのですが)

みなさんも自身の仕事の中でカーナビ思考 もとい仮説思考が使えそうなシーンはないでしょうか。カーナビの例を出して、「仮説でもいいからとにかく前に進んでみよう。修正すべきと分かったら修正すれば良い」という進め方を共有してみてはいかがでしょうか。
細谷さんがセミナーの中で次のようにおっしゃられていました。「仮説思考は間違いなく仕事のスピードを上げる。しかし相手にその認識がないと『アイツはすぐ嘘をつく。』といわれてしまう。そのためには『これは仮説思考というアプローチの方法だ』と共有する必要がある。」

その話が、私のこの記事を書くモチベーションにもなりました。世の中多くの人が仮説思考の有用性を知ればもっともっと意思決定のスピードは速くなる。この記事を読んでくださった方から多くの人に伝播していっていただければと思います。(ちなみにセミナーの内容の一部を記事にすることについては細谷さんにご了承をいただいています。)

メリットと危険性を共有しさえすれば、とても有用なアプローチです。ぜひ皆さんの仕事にもお役立てください。

 

about:細谷功さん

HP:http://www.isao-hosoya.com/

コンサルタントとしての専門領域:

 

・業務改革(新製品開発、営業・マーケティング、生産領域)
・戦略策定(技術領域、システム領域等)
・グローバルERP導入
・プロジェクトマネジメント
・チェンジマネジメント
など

メディア:

日経BP ITPro selfup(連載):細谷功の未来に飛躍する人と組織の羅針盤
webちくま
(連載):やわらかい頭の作り方
など

書籍:

など多数

 

 

タイトルとURLをコピーしました