コンサルタントから採用担当に異動になりまして(参考:転職しました。給料や他の待遇は下がらない形で。)、就活に関する情報にアンテナが強くなってきています。以前紹介したvingowでも就活関連のタグを多く設定しています。その中で次のような実情を知りました。
- 多くの企業が学生に求める能力として「コミュニケーション能力」をイチオシしている
- 多くの学生が自分に「コミュニケーション能力がある」と自覚している
さて、そこで疑問を投げかけます。
- コミュニケーション能力って何ですか?
- 学生の自覚「俺はコミュニケーション能力に長けている」は正しいのでしょうか?
一口にコミュニケーション能力と言っても、大きく3つに分類されると私は思っています。(分類と命名は私自身によるもの)
それは「フィーリングコミュニケーション(以後FC)」「ロジカルコミュニケーション(以後LC)」「ビジネスコミュニケーション(以後BC)」の3つです。それぞれ詳細に説明をしていきます。
実は私も学生時代には例に漏れず「コミュニケーション能力が高い」と自負(自覚じゃなくて自負ですね)していた一人です。ただ意識していたのは主にFC(あと少しだけBC)であり、LCについては考えもしませんでした。案の定といいますか、入社当時はボッコボコに怒られながらロジカルなコミュニケーションを覚えていきました。
フィーリングコミュニケーション (Feeling Communication)
感情ベースのコミュニケーションです。この能力が高い人は友達が多い、人に好かれやすいというというのがFCが高い人の特徴です。もっとも学生が意識しやすい、というかコミュニケーションというとこのフィーリングコミュニケーションを思い描く人が多いようです。相手に嫌な思いをさせない、気持ちよく一緒に仕事ができるというのは最低限必要な能力でしょう。
ビジネスの世界でももちろん必要な能力です。お客様に嫌われるよりも好かれた方が物事がうまくいくことが多いですし、社内対人関係も良好であることの方が圧倒的に望ましいです。ただ現実問題としては、このコミュニケーション能力がビジネスでどれほど重要かというと、後に説明するLCとBCに圧倒的に劣ると私は考えています。
ロジカルコミュニケーション (Logical Communication)
論理的に対話ができるかという能力です。学生時代の私には皆無な能力でした。ビジネスシーンと学生生活のシーンでは、このLCの必要性がまるで違います。学生生活の中では対話をする相手とは主に年代も近く、趣味も近く、バイトが同じであれば同じ空間や経験を体感していることが多いです。対してビジネスシーンでは初対面の取引先と会うことは日常茶飯事、対話する世代は20代から60、70、80代など広範囲です。利害が対立することもしばしばで歩み寄ろうとしない場面もあります。
ビジネスシーンでは、どんなバックグラウンドの人とも正しく会話ができる能力が不可欠です。そのために圧倒的に大切なことが正しい日本語を話せること(国内での話です)。友達同士であれば「あいつ激おこだぜ」で通じるかもしれませんが、40歳の上司には通じません。もちろん流行り言語などを使うことを否定しているわけではなく、相手が理解できる言語を正しく選択する必要があります。そして多くはスタンダードな言葉で正しく話せる必要があります。「会議が煮詰まってきた」という言葉の意味が分かりますか。
また、ビジネスでは次のような会話があります。
部下「A社から沢山クレームを頂いてしまいました。」
上司「たくさんじゃ分からねーよ」
部下「あ、すみません。まず製品についてのクレームが2点、他社製品と比較して××が足りないから、ウチでも搭載してくれというのも言われました。それから 価格についても『こんなにクレームがあるんだから値下げしろよ』とまで言われまして。」
こんな報告を聞いた上司はハテナです。
- 製品についてのクレームが2点
- +機能追加の要望
- +価格交渉
Or
- 製品についてのクレームが2点、そのうち1点は「他社製品ならできているのに」というものなのか
- 価格交渉は製品についての問題が解消されればOKなのか
など、部下の報告がごちゃごちゃになっていて良く分かりません。
以下のような報告だと上司としては現状の把握が正確にできます。
「A社から2点クレームを頂きました。一つは~~~~。もう一つは~~~~。後者の方は他社との比較でも強く言われまして、近々に対応してくれと言われています。で、『こんなにクレームが多いなら』値下げしろとも言われました。ただこれは製品の対応をしっかり行ってくれれ良いからというようなニュアンスではありましたので、次回訪問時にさらに話を伺ってきます。」
この報告であればA社からのクレームの内容は把握できます。また値引き交渉についても上司としては「とりあえず今、値引きのための稟議書を書く必要がない」ということを判断できます。始めの報告では、値引きの準備を始めなければいけないかどうか判断が出来ません。
このように相手に分かりやすく正しく正確に伝える能力がビジネスシーンでは必要となります。また、相手の言っていることを正しく正確に理解する能力も同様に必要です。
ビジネスコミュニケーション (Business Communication)
名前が微妙ですが、簡単にいうと「相手を動かすコミュニケーション能力」のことです。
- 相手に商品購入を決めてもらう
- 自分の企画を受け入れてもらう
- 相手に謝罪を受け入れてもらう などなど
ビジネスにおけるコミュニケーションの最大の目的は相手を動かすことだと私は思っています。この「動かす」というのは謝罪のコミュニケーションのように自分(自社)に対してネガティブな状態を解消する場合もあれば、どちらの商品を購入しようとしているか、購入を迷っているお客様に自社商品を選んでもらうというケースもあります。
このビジネスコミュニケーションを成立させるために最も重要なことは「何をしてあげると相手は動くのか」を考えることです。服の販売員の方にコミュニケーションをとられて、購入を決めるケースと購入したくなくなるケースはありませんか。例えば私は「すげー似合ってますよ。背が高いから細身のパンツが似合いますね」とか、褒められながら言われるとホイっと購入を決めてしまいます。でも「××は今シーズンのトレンドですよ。」と言われると、流行に乗るのが嫌いな私はすぐに冷めてしまいます。一見さんの客の好みを知って的確にセールストークをすることは難しいですが、上手な人だと始めにさりげない会話の中で客の好みを把握して、それに沿うような形で提案をしてくることがあります。
最後に
さて3種類のコミュニケーションの違いについてお分かりいただけたでしょうか。FCの項でも書いたとおり、ビジネスでより重要なのはLCとBCです。フィーリングコミュニケーションは相手に嫌われないという点は最低限身につけておく必要がありますが、それ以降は極端に素晴らしいという場合でなければビジネスシーンではあまり役には立ちませんし、就活の際にそのようにアピールをしてもあまり意味がありません。コミュニケーション能力としてアピールするならばBCかLCでしょう。
個人的には特にロジカルコミュニケーションが重要だと思いますが、これのアピールは「実践」で行うしかありません。面接の場では自分がロジカルなコミュニケーションが得意であるという点を、相手に見せ付ける必要があります。
もちろんアパレル企業ならばBCやFCのほうがLCより大切でしょうし、多くの人とプロジェクトを組むような仕事ではLCが必要です。一般職であればFCとLCが大切となるでしょう。自分が希望する職種や業種によって必要となるコミュニケーションスキルは違いますので、その点についてもご自身の中で考えてみてください。
また、もうひとつ大切なコミュニケーションがあります。それはGLOBAL COMMUNICATIONです。これについてはまた別の機会に書くとして、今回はフィーリング、ロジカル、ビジネスのそれぞれのコミュニケーションの違いがあること、特徴について覚えて帰っていただければと思います。また就活の自己分析をするにあたっては、自分にはコミュニケーション能力があると思っているのは具体的にはどういうことかを深く考えてみてください。そうすれば面接の場などでも適切なアピールができるようになるはずです。
最後にこれは今年デビュー20周年を迎えるGLAYの22thシングル『GLOBAL COMMUNICATION』