「内定出すから今すぐ就活やめてね」はパワハラですよね。

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就活・転職
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学生を恐怖であおって内定承諾させるなんてパワハラでしょ。

「内定出したらウチに決めてくれる?」と聞かれたら?

この様に学生に迫る企業が少なくないようです。

  • 今ここで○○社に辞退の電話をしてください。
  • もう就活やめるなら内定を出す。
  • 内定を出すとしたら、受ける?
  • 他の会社と迷っていると言ったらブチ切れられて『じゃあ今回の話はなかったことに』という感じに

悲しいかな採用におけるパワーバランスは学生より遥かに企業の方が上でしょう。当然学生も「受けないと言ったら内定が出ないのでは」と考えてしまいます。当たり前です。

ちなみに私が学生時代から、周りでは結構上記のような状況があったと聞いていますが、今はどうでしょう。
同じような状況にあったという方はTwitterなどで「こういう目にあった」などと教えていただければと思います。

学生としては、内定を受けるかどうかはこれから40年ほどのビジネスマン人生のファースト・ステップになるわけです。

内々定で時間的猶予をくれる会社はともかく、すぐに答えを求める会社は自分らに自信がないのかよと思ってしまいます。

時間の無い中で大切な決断をすべきではない

GLAYの『とまどい』という曲に、結論の違う2つの歌詞があります。

・悩んで迷って決めた心に出した答えにしばし背を向けて

・悩んで迷って決めた心に出した答えに深く頷いて

現役で大学を卒業すると、22-23才で一年目を迎えます。定年の60才まで40年近く仕事ライフが続くわけです。
これまでの人生の2倍くらいの時間の過ごし方を決めるファーストキャリアですよ。企業側も学生側もこの大切さはしっかり認識すべきです。

もちろんキャリアの全てを見越して決められる訳はないと思います。ですが3年後の自分がどうなっていたいのか、どういうスキルを身につけていたいのか、30才になった自分はどのようになっているのかなどをざっくりは考えておいた方が良いです。3年経った時に、過去の自分に恨み言を言わないためにも。
もちろん選考を受けながらしっかり考えてきているはずですが、最後の決定を下すのが半ば脅されながらの「エイや!」ではしっかり将来のことなど考えられる訳はありません。

そもそも人間の頭というものは将来のことをなかなか考えられません。目先の利益を追ってしまいがちなのです。

マシュマロ・テストという実験をご存知でしょうか。4才の子供に「マシュマロをあげるけど、15分我慢できたらもう一個あげるよ」と言い残して部屋で一人15分待たせるとどうなるかという実験です。
今どうしても食べたい事情があるならともかく、15分待った方が利得が大きいのは間違いないです。でも200人近くの子供のうち、2/3はマシュマロを食べてしまったようです。

せっかく内定が出たのに逃したくないという感情が働くと、自分の人生までしっかり考えた上での決定はできないでしょう。どちらかと言えば「その内定を受けるための理由」から逆算して考えてしまいがちです。すなわち「他の会社に比べて~~という点はベストだし」とか「やりたいことがやれそうだし」とか。

多くのケースでは第一志望がはっきりと決まっているわけではないでしょう。第一志望の会社が幾つかある(第一志望群というそうな)状態で選考に臨むケースが圧倒的に多いようです。第一志望があっても「安定した会社だから」とか「やりたいことがやれそうだ」といった思考停止状態で決めているケースもよくあるようです。

緊迫感に迫られて出した答えに、30年後の自分が深く頷けるでしょうか。
自分の子どもに「わたしは失敗したから、ちゃんと考えなさいよ」というのでしょうか。

内定を取ってからがホントの就活!

サマーインターンを経て入社先を決めたりするアメリカでの就活に比べて、日本の就活はリクナビ等のナビサイトや企業説明会などの情報で進路を決めるケースが多いです。これが何を意味するかというと「操作された情報を元に就活をする」ことになりかねないということです。そして入社前のイメージと入社後のギャップを感じて退職をしてしまうケースが後を絶たない。これは大きな社会問題です。
そもそも選考の段階では「こんな質問をしたら落とされるんじゃないか」と尻込みをして、本当に聞きたいことが聞けないというケースはあるでしょう。

  • 希望部署に配属されなかった時、部署異動はどれくらい期待できるのか?
  • ぶっちゃけ給料のイメージってどんなもんでしょーか?
  • 残業ってどれくらいしているのでしょうか?
  • ワークライフバランスを大切にしたいのですが・・・

などなど。

さらにいうと、仕事をしたことがないのにその会社での仕事を想像して、「こういう場合にやり甲斐を感じるだろう」と思うことは非常に難しいはずです。私は入社当初、希望部署を聞かれたときに「接客業をずっとやってきた経験から、お客様にありがとうを言っていただけることを非常にやり甲斐に感じています。だからコンサル職を希望します。」と言いました。
でも2年目くらいからはお客様のありがとうは正直どうでも良くなりました。ありがとうがなくてもお客様の業務効率をおもいっきり上げたとか、めっちゃコスト削減できたとか、お客様が出世したとか、そういうことの方がよっぽど嬉しく思うようになりました。
そして5年目くらいからは、「皆が楽しく働ける世界」に興味が移りはじめ、採用活動もそうですしこのブログもそうですが、「働くって楽しいぜ!」を伝播させていく仕事に非常にやり甲斐を感じています。

というように、やり甲斐や興味の対象は移り変わる(より高次元になっていく)し、少ない情報からできるイメージは本当にあてにならないはずです。「営業がしたい」と意気込んで入社をしたら経理部に回されて電卓叩く日々が待っているとかがあるわけです。

希望部署に配属にならない可能性があることとか、実際に想像していたやり甲斐は感じられないとか、ギャップは沢山予想ができます。「インフラに貢献したい」といって私鉄の運転手になった知り合いがいましたが、「暇すぎて死にそう」と嘆いています。
とあるインフラ系の超有名企業は「会社には逆らえないことを分からせるために、新卒の配属は全て希望していない部署にする」というところもあります。その企業に努める友人から聞いた話です。

などというギャップで「こんなはずじゃなかった転職」をしないためにも、やっぱり多角的に情報を集める必要があります。そしてそのためには選考を全て終わらせて、「会社と学生が対等になった状態」になる必要があります。

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内定が出揃った後は、学生が企業を選ぶ番

選考を突破したら立場は完全に対等ですよ。自分のファーストキャリアをどこで築いていくのか、真剣に考えて良いんです。そのために必要な情報は全て出すべきだし、時間の猶予も与えるべきです。
それをさせない企業は恥を知れと言いたい。嘘ついて採用するのは詐欺だし、「今すぐ決めなきゃ内定出さないよ」とか「他を今すぐ切ってね」といって選択肢を狭めさせるなんて真似は、強い立場を利用したパワハラもいいところ。恥ずかしくないのかと本当に思う。特に大企業ほどそういう傾向にあるみたいで、同じ人事担当としては情けなく思います。

もちろん人事担当者は数字を追う必要があるのでしょうが、自分自身の成績と、将来有望なたくさんの学生の人生を天秤にかけるなよ。ほんと。Win-Winでいうと「学生が深く納得して自分の会社を選んでくれて、それによって目標数値を達成できた」でしょ。目標数値を達成するために学生に禁じ手を使うとか、みっともない。

私も採用担当です。ウチの会社はどうしたら学生が納得して意思決定できるのかを愚直に考えている、本当に素敵な会社だなあと思う。そういう会社で人事をやれていることを誇りに思いながら、以上です。

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