なぜ若者は3年で3割退職するのか?シンプルに原因と対策を考えてみよう。

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数年前にベストセラーになった若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~という本をお読みになった方は多いはずです。この本では企業内部の構造的な問題点に主眼を置いています。本エントリーの本題ではないですが、さらっと概要をまとめると次のとおり。

  • かつて「年功序列から成果主義に」というのが人事のトレンドがあり、多くの企業が成果主義型の人事制度を採用した。
  • とはいえ中途半端に採用した企業が多く、年功序列の空気が抜けていない社員の問題、やる気満々で成果を上げて出世してやろうという若者を待つのは「大して成果主義じゃない世界」という現実。
  • 「俺の力で○○を変えてやる」と意気込んでいた若者は、ギャップにやられて辞めてしまう。

今回このエントリーでは、もっとシンプルに若者がすぐに辞めてしまうことの原因を考えます。

退職の理由はミスマッチ

自身と企業のミスマッチが退職理由の多くを占めます。(参考:退職理由のホンネランキングベスト10)

退職理由

リクナビさん、勝手に拝借しましたので問題あればご連絡ください

このうち「3位 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」「7位 キャリアアップしたかった」「7位 会社の経営方針・経営状況が変化した」「10位 昇進・評価が不満だった」はミスマッチとはいえない内容ですが、それ以外は雇用のミスマッチといえるでしょう。中には「1位 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」は3位の人間関係依存の問題と捉える人もいるかもしれませんが、こちらは人間関係でなく会社の問題です。経営者の仕事の仕方が気に食わないのは経営者と自分の考えが合っていなかったことです。上司のやり方が気に食わなかった場合「そんな人間の下でイヤイヤ働かなくてはいけない」現実は人事制度の問題ですし、よくある「自分よりも無能な上司が・・・」という問題は自分より無能なハズの人間の下で働かなくてはならない人事制度の問題です。それこそ上で紹介した本に記載されているように正しい成果主義を導入できていれば回避できる問題です。

このようにほとんどの退職理由がミスマッチです。なのでミスマッチが発生した理由が大切です。



ミスマッチが発生した理由は?

多くの企業は「最近の若者は根性がない」とか「情報は開示しているのに企業研究や業界研究が足りない」と若者側のせいにします。厚生労働省のデータ(P.3)を見ると分かりますが、新卒者の3年以内離職率が30%を超えたのは平成7年であり、もう20年も前のことです。平成7年といえば企業の情報をインターネットで集めることも不可能だった時代です。今の方がよっぽど情報にも恵まれているし、ゆとり教育も一切関係ありません。根本的な原因は違うところにあるのです。

私が思う、若者早期離職が絶えない最大の理由は企業の人事部がウソをついているということです。

企業の人事部の言うことは信じるな

多くの人が就活で経験したでしょうし、これから就活をする人は経験することになるでしょうが、企業の説明会で話を聞くと多くの企業について「知らない業界だったけど楽しそう。やりがいがありそう」とポジティブな印象を受けることが多いです。これはプレゼンが上手いからです。自社の魅力を、いや魅力だけを上手に伝えるのが上手いのです。人事ってやつは。

そしていろんな会社の説明を聞いているうちに目移りしてきます。A社に行こうと決めていたけど、B社やC社の話を聞いてとても迷っているといった具合です。知らなかった業界や会社の仕事も、話を聞いてみると面白く見えてくる。知れば知るほど好きになる。なんてそんな甘い世の中じゃありませんから注意が必要です。だいたいどの会社も仕事が面白くてやり甲斐があって社会に貢献できるならば、世の中の人はうつむきながら不平ばかりを漏らしながら仕事をしていません。通勤電車の中は夢と希望とやる気に満ちた人であふれているはずです。私だってこの「働くって楽しいぜ!」というブログを書かずに済みます。

でも現実はそうじゃない。多くの会社はつまらない仕事をやらされるしやり甲斐も感じられないし、こんなはずじゃなかったと言って退職してしまうものなんです。

ウソをつくという表現は少し尖っています。「いや俺はウソをついているんじゃない」と主張する人もいるでしょう。「言い方を工夫しているだけだ」と。どちらも同じです。

よく例にあげられる問題に有給休暇の問題がありますね。会社説明で「うちの会社にはこんなに沢山休暇の制度があって、充実しています」と言いながらその実、社内では休暇をとる奴は出世しないという文化が蔓延していてとてもじゃないけど休暇をとれるような雰囲気じゃないというもの。

この場合、正直な人事は「休暇の制度は充実してる。でも現実問題として雰囲気の問題もあって取れてる人は少ない。」と伝えます。なぜなら学生の関心ごとは「自分はこの会社に入って休暇が取れるのかどうか」であって「この会社の休暇制度が充実しているか」は本質的にはどうでも良いこと。

理想論ですが、人事が全て正直に学生に話して入ればミスマッチは生まれないはずなのです。給与が昇給しづらいことだって入社前に伝えるべきだし、超古い体質の会社だから新しいアイデアが通りにくいよという情報も伝えるべきなんです。学生が勝手に信じ込んでいる「俺はこの会社でこういう活躍ができるぜ」という思い込みも、間違っているなら正してあげないと彼が可愛そうです。

そこまで伝えてもミスマッチがあるとすれば、入社後に会社が買収されて制度や経営方針や文化が180度変わったなどですね。これは仕方のない話でしょう。賃貸を契約する際に「契約後に目の前に巨大マンションが建って、最高だった日あたりが最低になっても文句言いません」的な項目にも同意をしないといけないのと同じです。予期しようがないのですから文字通りしょうがありません。でもコンビニ徒歩5分と書いてあって、それがローソンでもセブン-イレブンでもなく、「安東屋」という名前のコンビニっぽい夜9時に閉まる店ならちゃんと伝えるべきです。

どうすればミスマッチを防げるか

会社側の人間である人事部にウソをいうな、正直に全て話せと言ってもかなり難しいでしょう。そもそも人事は、私みたいにその会社のことを死ぬほど好きな人間がなるべきなのです。

なぜでしょうか。それはネガティブな面も含めて会社のことを正しく伝えられるからです。例えば休暇を取りづらい雰囲気が本当にあったとして、でもそれも含めてその会社のことを好きな人なら次のような説明ができます。

「今実は会社はとても過渡期なんだ。だから休暇制度自体は充実しているけど、取得している人はほんとうに少ない。どうしても休まないといけない時にはもちろん取得できるけど、レジャー休暇は取れる余裕はないと思ったほうが良い。でもさっきも言ったとおりとても大事な時期で、ここ1~2年の踏ん張りで業界1位になれるか、業界6位で終わるかという瀬戸際。だからみんなとても前向きに働いている。」

こんな風に説明をすれば「体力的には辛いかもしれないけど、とても有意義そうだし頑張りたい!」と思える人は納得して入ってくるし、本当に2年間は休暇が取れなくても、それを理由に退職をすることはありません。そして「大切なのは分かるけど、そもそも僕はどんな時も仕事よりプライベートの方が大事だし、大好きなGLAYのライブが平日だったら休暇を取りたい」という人はそもそも入社をしてきません。よって社内で「またゆとりが入ってきたよ」というくだない文句も聞かなくて良いですし、いつかはミスマッチで辞めることになっただろうGLAY好きの彼は履歴書に傷をつけなくて済むのです。なんてWin-Winな構図でしょう。

会社のことをあまり好きじゃない人は、そもそもその会社のどこが魅力でどこがネガティブポイントなのかを正しく認識していません。したがってネガティブな面も伝えながら魅力を伝えるという高度なテクニックが使えません。なので学生に「この会社に入社するのはやめよう」と感じられるリスクのあるネガティブな要素はできるだけ言わないようにします。

いま会社で働いている人が会社のことを心から好きになって、その上で全て正直に学生に魅力を伝えることはほぼ不可能でしょう。だいたいそんな素晴らしい会社だけじゃないですし。なので学生側が予防策を講じる必要があります。

  1. 採用担当の言うことは裏を取ること
  2. 内定を獲得してからは容赦なく交渉すること

という予防策が考えられます。それぞれ1については自由な会社とは? 個性を大切にする会社の見極め方で書いている様にOB/OG訪問で具体例を上げさせてそれが真実かを見極めるという手法が効果的です。他にも大企業であればインターネット掲示板などの情報もソースとしては持っておきましょう。特にその会社で働いたことのある人が匿名で記載している情報は、はずれもありますが貴重な正直な情報もあります。

2の内定を獲得してからの交渉については以前「内定出すから今すぐ就活やめてね」はパワハラですよね。というエントリーを書きましたが、そこで詳しく触れました。一部を引用します。

選考を突破したら立場は完全に対等ですよ。自分のファーストキャリアをどこで築いていくのか、真剣に考えて良いんです。そのために必要な情報は全て出すべきだし、時間の猶予も与えるべきです。
それをさせない企業は恥を知れと言いたい。嘘ついて採用するのは詐欺だし、「今すぐ決めなきゃ内定出さないよ」とか「他を今すぐ切ってね」といって選択肢を狭めさせるなんて真似は、強い立場を利用したパワハラもいいところ。恥ずかしくないのかと本当に思う。特に大企業ほどそういう傾向にあるみたいで、同じ人事担当としては情けなく思います。

今回のエントリーはあくまで私の個人的見解を述べるものですが、わたしの会社(ブログ運営の都合上、社名は非公開です)では「どんな質問にも答えるしやましい事も全て話す。フルオープンスタンスだ」と言って採用活動をしています。そういう会社が増えると良いのですが。


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