以前書いた記事(日本人はなぜ仕事の効率が悪いのか?海外と比較して解決策を探す。)が
いまだにTwitterでの反響も多くいただき、生産性に対する問題意識は潜在的には多くの人にあったのだなと思いました。
生産性を上げる必要があると思ってもなかなか難しいという中で、今回はタイム・マイスターとしてタイムマネジメントに関する講演活動を行っている野呂浩良さんにインタビューを行いました。
10年間時間を計り続けてきたという、社内外でタイムマネジメントの第一人者として知られる野呂さんですが、時間に対して意識を強く持つようになったのはなぜでしょうか。
私は22歳のときに父を亡くしました。最も身近で大きな存在であった人の死を目の当たりにして、今までの自分が「生」を無駄にしていたことに気づいたのです。
人生のあっけなさ。命のはかなさ。人生には必ず終わりがある。自分に与えられた時間には限りがある。時間は唯一、人類に皆平等に与えられたものであり、その使い方が人生を決める。
これらの想いから、私に残された人生の時間を限りなく有効に使うことを目指す為に、その日からすぐにストップウォッチで全ての時間を計り始めました。それから早10年、毎日これを続けています。Excelに記録したり、今はiPhoneのアプリで便利なものがあるので、それを使い続けています。(参考:お薦め時間記録アプリ)
ストップウォッチで全ての時間を計るというのは非常に大胆ですね。それだけでも大変な作業だと思うのですが、時間を計るのは何のためでしょうか。
まず、多くの人は「時間が無い」とよくいいます。では時間が無いと感じるのはなぜでしょうか。本当に時間が無いのでしょうか。私はこう考えています。「時間が無い」のは”やりたいことをやるという理想と、現実の間にギャップがある“という状態です。理想は意思で描き、現実は行動で描きます。つまり意思と行動の整合性がとれると、時間が無いという状態が解消されるのです。でも行動というものを人間なかなか正しく把握できません。3日前の食事をなかなか思い出せないのと同じです。家計簿をつけないと収支と支出の管理を正しく行えないのと同じです。
なるほど。「お金が無い」と嘆くだけじゃなくて、家計簿をつけて無駄な支出を把握すれば削減できるものが分かる。無駄な支出を削減して本当に使いたいところにお金を投入できていれば、人はお金がないとは嘆かないのと同じですね。
そうなんです。「何にどれだけの時間を費やしているのかをわからずにして、どうやってそれを解決するダイレクトな打ち手を打つことができようか」というのが私の主張です。恥ずかしながら最近になって初めてドラッカーを読んだのですが、「知識労働者が成果を上げる為の第一歩は、実際の時間の使い方を記録することである。」とありました。時間を知ることの大切さを彼も訴えています。
プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
時間を知って、例えば労働にかけている時間が意思どおりでないと分かった時に、どのようにして意思と行動の整合性をとるのでしょうか。
時間に追われず、意思を持って時間を攻めるのです。時間に対してアクティブに攻め込んでいくことが大事です。具体的には次の行動に落とし込まれます。
- 断つ :入ってくる時間を防ぐ
- 捨てる :以前からある時間浪費を捨てる
- 任せる :誰でもできることは任せる
- 集中する、まとめる:効率よくやる
(※判断基準を明確にして、徹底的にやる)
時間を攻めるという表現は非常に面白い表現ですね。断つ・捨てる・任せるなどについて具体的に説明していただけますか。
例えば形式だけの意味のない会議への出席を断つことで生産性の高い仕事に時間を使えるようになります。飲み会も例えば上司の愚痴ばかり聞かされる飲み会に参加しなければ、人脈作りや有益な飲み会に時間を充てられます。
特に見たいものはないのに、つい毎日だらだらとテレビを見るような習慣があれば、これは意識して捨てて、勉強の時間や家族との時間に充てたほうがよいかもしれません。
毎日の掃除をルンバなどの掃除ロボットに任せることで自分の時間を他の自分にしか出来ないことに充てられます。
洗濯を毎日すると毎日アイロンがけをしなければなりませんが、アイロン台を毎日出し入れしたりするよりも、2~3日に一度まとめて洗濯をすることでアイロンの手間を一度にまとめることが出来ます。
任せるというのは人に仕事を振るということも含まれると思いますが、そうすると自分が時間を有効に使える反面、振られる側は仕事が増えるのみとなりませんか?
例えば数値入力などの事務作業も全部自分でやっていて、残業が多い時代がありました。かたやアルバイトの子がヒマそうにしている。そういったときに仕事を振るということは全体的に見ても非常に効率的です。また自分じゃない人が対応したほうがクオリティもスピードも速い仕事もあります。そういったものは納得していただける説明をした上で仕事を振っています。
なるほど。相手を納得させるというのは確かに重要であり、有効な解決策になりますね。ところで、時間をつねに意識して生活をしていると、常に時間にとらわれているようなセカセカした気持ちになったりしませんか。
実はその逆なんです。タイムマネジメントは時間を知り、時間を攻めるところに意義があります。つまり時間に追われるというのと全く逆の状態です。「いまから30分で資料を作るぞ」と決め手から仕事に取り掛かれますし、やりきった達成感もあります。遊びの時間も「午後はみっちりプライベートの時間を楽しむぞ」と、プライベートの時間も「如何に楽しもうか!」と高揚感を持って生きられるようになります。はじめにも話したとおり、死が誰にでも訪れる以上、時間の使い方が人生を決めますからね。時間記録をすると自分で能動的に時間を使うことができ、人生が本当に楽しくなるんですよ!!これは強く伝えたい部分です。
タイム・マイスター養成塾で講演活動をしているのも、他の人にも時間の大切さや時間を攻めることで得られる人生の楽しさを共有したいという思いからでしょうか。
それもありますが、将来のためでもあります。時間の使い方を広めていく活動は自分が生涯を通して行いたいと思っています。今は講演をしていますが、たとえば将来的にはもっとタイムマネジメントが楽にできるサービスの開発なども構想しています。今はタイムマネジメントを広めてみてどれくらいの人に響くのか、ニーズはどれくらいあるのだろうか、そういった市場調査の意味も含んでいます。
反響はどうですか。
良い変化があったという声を非常に多くいただけています。これは非常にありがたいことです。次のような声をいただいています。
- 時間記録をし始めて、時間を無駄にしたと後悔する回数が減ってきました。
- これから自分がやろうとしていることの時間を計ることで、やることを明確に自覚するようになり、以前と比べて無駄な時間を明確に意識できるようになりました。
- 実は昨日、会社にも働き方について自分の考えを提案しました。
素晴らしいですね!効果を実感したという声を聞くとやはり嬉しいのではないかと思います。
最後になりますが、これからタイムマネジメントを行っていこうと思う人に対して、アドバイスをお願いします。
習慣をつくるのは、はじめが大変です。でもそれを乗り越えて習慣化してしまえば、タイムマネジメントによる効果を感じながら続けていけるはずです。時間を攻める高揚感が絶対に感じられます。よく目標と計画が大切だなどと言われますが、現状を知らずしてどうやって計画が立てられましょう。多くの人が家計簿をつけるのになぜ時間簿をつけないのですか。時間をつけることの大切さと効果を是非知っていただいて、多くの人が有意義な時間の使い方をしていただければ非常に嬉しいです。
野呂さん、ありがとうございました。
野呂さんは現在も講演活動を行っています。
Facebookページ【タイム・マイスター養成塾】をチェックしてみてください。
(開設したてですが今後コンテンツ拡大予定です)
直接野呂さんに伺ってみたいことや、実践的なケーススタディを学びたい方は
セミナーに参加いただければと思います。
- 株式会社すみや ミュージックイン伊勢原店:販売職
- 株式会社リクルート キーマンズネット推進室:営業職
- 株式会社ワークスアプリケーションズ コンサルタント職
- 現在は個人事業主として活動中
前職から現職まで一貫して生産性向上をテーマにして仕事に取り組み、短時間で非常に高い成果を上げ続ける。
グロービス経営大学院大学 経営学研究科を卒業
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[…] 時間記録を10年続けたタイム・マイスターから学ぶ「時間を攻める」とは? | 働くって楽しいぜ! 以前書いた記事(日本人はなぜ仕事の効率が悪いのか?海外と比較して解決策を探す。) […]
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